非接触温度計のQ&A
非接触温度計シリーズとは
Q.赤外線とは?
Q.遠赤外線とは?
Q.赤外線の利用法は?
Q.従来型(接触型)温度計と非接触型温度計の違い
Q.非接触型温度計の使用上の注意点は?
Q.赤外線とは?
人の目に見えない光で、赤色の光の外側にあり、赤色より波長が長く、電波より波長が短いです。また、英語では「infrared」といいます。地球上の全てのものに温度があり、温度があるとその物から赤外線が放射されています。人間は37℃程度の温度なので弱い赤外線を発しており、太陽は6,000℃程度なので、強烈な光と赤外線を発しています。
赤外線の可視光に比べて波長が長く、散乱しにくいという性質を利用して、煙や薄い布などを透過してその向こう側の物体を撮影するのに使用することができます。また、人の目に見えないという性質を利用して夜間に被写体に気づかれることなく撮影することが出来るため、警備、防衛野生動物の観察にも使用することが出来ます。
Q.遠赤外線とは?
赤外線を区分すると、近・中・遠の3つに区分され、これらの区分は赤外線の波長で決められています。(近赤外線0.7-1.4um、中赤外線1.4-3um、遠赤外線3-1,000um)
遠赤外線は熱線とも呼ばれており、性質は電波に近いです。全ての物質は熱放射によって温度に応じたスペクトルの電磁波を発していて、この強度は高温の物体ほど強くなります。温度に応じて異なる強度の赤外線を放射しているため、その性質を利用し対象物の温度を測定することが出来ます。これを応用したものがサーモグラフィーです。
Q.赤外線の利用法は?
1.加熱法(エネルギー)として利用
水分の過熱なら中赤外、水分子の回転スペクトルなら遠赤外、振動スペクトルなら近赤外部を利用するのが望ましい。(例:天津甘栗の加熱、石焼イモの過熱)
2.赤外線計測技術(情報受信)としての利用
物体から放射される赤外線をとらえ、物体の温度・温度分布を計測する技術。
赤外線を物体に放射し、その赤外線の吸収・透過・反射などの特性を計測する技術。
3.赤外線通信技術(情報受/発信)としての利用
電気製品のリモコン、パソコンデータ通信、CDデータ読み取り。
4.赤外線レーザー技術(エネルギー)としての利用
レーザー用医療用メス、産業用切削加工機 YAG(1.06um)、CO2(10.6um)
Q.従来型(接触型)温度計と非接触型温度計の違い
そもそも温度を測るときは そのものに温度計を接触させて測ることになっています。その際、以下の2点に注意しなければなりません。
1.測ろうとする物体に温度計を接触させること
2.温度計が測ろうとする物体と同じ温度になっていること
この方式では・・・
時間を要する
体温を測る場合、昔のガラス温度計では、約3分の時間が必要でした 。
現在の電子式体温計は体温の上昇をコンピューターで予測し、約1分程度で早めに表示しています。
物と接触しなければならない
測る物が小さくて、温度計を接触させるとその物の温度が変化してしまうような場合、本質的に危なくて接触ができないところ(電気設備のように感電事故が発生する)は計測できず、示温テープ(温度の状態で色が変わるようなタイプ)のような物で対処していました 。また、食品を扱うような分野で加熱温度の管理、冷凍保存の管理においても接触型は衛生的ではなく、問題がありました。
非接触型温度計には以下の特徴があります。
測定に時間を要さない
測ろうとする物体から放射してくる赤外線をセンサーで受け取るので、センサーの整定時間程度の時間(1~2秒)で計測は完了します。
物に接触させる必要がない 測定対象物と温度計の距離に関係なく測定できる
あらかじめ赤外線の集光特性(距離係数)があり、その範囲内なら距離に関係なく(温度計を近づけたり遠ざけたりしても温度指示は変化しない)測定することができます。
Q.非接触型温度計の使用上の注意点は?
1.放射率を考える。
放射率は測ろうとする物体の材料と表面状態で変化するので、温度計には放射率の設定機能が付いています。
おおよその値は文献などで判明しておりますが、接触型温度計で実測し放射率を求めるか、黒体テープを貼り付けて放射率を規定値にして計測する方法があります。
2.測ろうとする物体の大きさと温度計の位置を考える。
この温度計には測定対象物から赤外線を集めてセンサーまで到達させるレンズ+ホルダーがあり、その設計には用途によって様々な特徴があります。これらの性能を表示するのは距離係数として定義されています。
距離係数=温度計から測定物までの距離/測定対象物の面積の直径